帯広市拓成町にある香林農園のチーズには、カムエクやペテガリといった日高の山の名前がつけられている。未登のピパイロもその中のひとつである。遠いことは覚悟のうえではあったが、持参した水分3.5リットルをすべて飲み切り、足のつま先も痛めるなど、ヨレヨレ状態での下山だった。
ピパイロ岳までは道のりはしっかりとし危険なところも迷いやすいところもなく一級国道並みである。ピパイロ岳ピーク近くに残っていた雪渓を見て、山頂ビールを用意してこなかったことを強く後悔した。風のないピパイロ山頂で20分ほど山座同定をしながらのんびりした。
気温が徐々に上昇してきたため、高低差の大きいはずの往路よりも、復路のほうが何倍も辛く、ここを登り切ればあとは下りのみという気持ちで伏美岳の登り返しを頑張ったが、傷めたつま先のせいで、伏美岳からの最後の下りの方がよっぽど辛かった。
10時間を超える行動時間の半分以上は苦しい思いの連続であったが、日高の山々に伸びる稜線の美しさがその辛さを癒してくれた。やっと宿題を終えたような気持ちで、心は満足感で一杯である。
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